提案書の作成依頼には判断の目的と前提が必要だ
商談メモだけでは、商談相手が何を判断したいのかまで伝わるとは限りません。依頼票に書く内容を整理し、推測による行き違いを防ぎます。
- 提案の目的を決める 商談相手が判断したいことと、その判断に必要な前提を依頼票に書けるようにします。
- 情報の扱いを決める 決まったこと・未確認のこと・相手の言葉を分けて渡し、提案書に載せてよい情報の範囲を別に決めます。
- 確認の進め方を決める 質問への回答方法、下書きの確認観点、営業管理表に残す内容を決めます。
商談メモだけの依頼には推測の余地が残る
商談メモは、多くの場合、営業担当者が自分で読み返す前提で書かれています。相手を知らない人にそのまま渡すと、省略した背景を推測で補うことになります。
- 背景を補って渡す 発言だけでなく、その話が出た背景と、提案に関係する事情を書き添えます。
- 依頼内容を明らかにする 記録の中から、今回の提案で答えることを取り出します。メモ全体の読み取りを任せないようにします。
- 不明な点を残す 分からない部分は未確認と記します。依頼時に無理に埋めると、推測が前提として扱われます。
渡す情報の整理
| 渡しがちなもの | 作成担当者に起こること | 代わりに渡すもの |
|---|---|---|
| 発言の断片 | 話題が出た理由を推測します。 | 発言と、その背景を渡します。 |
| 時系列のメモ | 今回答えるべきことを探します。 | 提案の目的と答える質問を渡します。 |
| 社内の感想 | 発言と区別されていないと、相手の意向として読まれます。 | 発言と自社の解釈を分けて渡します。 |
| 資料の束 | 参照すべき箇所を選びます。 | 用途と参照箇所を示して渡します。 |
提案書で答える内容は相手の判断目的で決まる
導入を決めたいのか、案を比べたいのか、社内で説明したいのかで必要な情報は変わります。相手が今回判断したいことを一文で書きます。
- 判断の対象を絞る 提案書を読んだ後に、何について判断するのかを明らかにします。自社が伝えたいこととは分けます。
- 今回の範囲を決める 最終的な導入判断まで求めるのか、その前の検討に必要なのかを区別します。
- 目的の不明点を尋ねる 判断目的が不明なら、相手への確認事項にします。購入を決める段階だと推測しないようにします。
判断目的と必要な情報
| 相手の目的 | 依頼票に書くこと | 提案書で答えること |
|---|---|---|
| 導入の可否 | 解決したい問題と導入条件を書きます。 | 条件を満たせるかを答えます。 |
| 複数案の比較 | 比較対象と重視する点を書きます。 | 各案の違いと選ぶ際の条件を答えます。 |
| 社内で説明する材料を得る | 説明先と、その人が判断する事項を書きます。 | 判断の根拠となる情報を示します。 |
提案の前提には相手の状況と条件の明記が必要だ
要望だけを渡しても、その要望が生まれた事情までは分かりません。相手の状況、要望、守る条件、判断する人を分けて記します。
- 状況と要望を分ける 現在困っていることと、実現したいことを区別します。要望の背景も作成時の判断材料になります。
- 条件の重みを伝える 必ず満たす条件と、相談できる希望を分けます。相手の優先順位を自社だけで推定しないようにします。
- 判断する人を記す 商談の相手と最終的に決める人が同じかを記します。分からなければ確認事項として残します。
前提の確認項目
| 前提の種類 | 書くこと | 確認できていなければ |
|---|---|---|
| 相手の状況 | 現在の業務と困っている点を書きます。 | 何が未確認かを書き、要望の背景は不明と記します。 |
| 相手の要望 | 実現したい状態と優先事項を書きます。 | 優先順位を確認事項にします。 |
| 守る条件 | 必須条件と相談できる範囲を書きます。 | 満たせると断定しないよう指示します。 |
| 決める人 | 判断する人と、その人の関心事を書きます。 | 商談相手に確認する項目を残します。 |
合意と希望を分けなければ確定事項の取り違えが残る
相手の希望は、双方で合意した内容とは限りません。決まったことと未確認のことを分け、その判断の根拠も添えます。
- 合意の範囲を示す 何について、誰と、どこまで合意できたのかを書きます。一部の合意を提案全体への了承として扱わないようにします。
- 希望を確約に変えない 相手が望んでいても、自社で対応できるか未確認なら確定事項に含めません。
- 推測には根拠を添える 自社の推測は、その根拠と確認先を記します。根拠があっても、相手の了承に置き換えません。
情報の区分と扱い
| 区分 | 書き方 | 作成担当者への指示 |
|---|---|---|
| 合意した内容 | 合意の範囲と確認相手を記します。 | 合意した範囲内で前提にします。 |
| 相手の希望(対応可否は未確認) | 要望として記し、対応可否を分けます。 | 実現を約束する表現にしません。 |
| 自社の推測 | 推測と明記し、根拠を添えます。 | 相手の意向として書きません。 |
| 相手への確認待ち | 相手に尋ねる事項と確認役を記します。 | 回答が必要な箇所は保留します。 |
相手の言葉と自社の解釈には区別が必要だ
自社の言葉に置き換えると、相手が重視した点が変わることがあります。元の発言と解釈を分け、意味をたどれる状態で渡します。
- 元の言葉を残す 記録に残る発言は、話題や場面と一緒に渡します。記憶による要約は、その旨を明記します。
- 解釈した箇所を示す 自社で補った意味や言い換えは、発言と別に記します。相手が言っていない内容を混ぜません。
- 意味を確認して使う 意味が曖昧な言葉は確認事項にします。提案書で使う表現も、相手の意図と合うかを確認します。
発言から表現までの区別
| 情報 | 渡し方 | 理由 |
|---|---|---|
| 相手の発言 | 記録にある言葉と発言の場面を渡します。 | 意味を判断した根拠をたどれます。 |
| 記憶による要約 | 正確な引用ではないことを明記します。 | 実際の発言との混同を防げます。 |
| 自社の解釈 | 元の発言と分け、解釈の理由を添えます。 | 補った意味が分かります。 |
| 提案書の表現 | 提案書で使う予定の用語のうち、相手の意図と合うか未確認のものを示します。 | 言い換えによる意味のずれを確認できます。 |
質問の一覧と下書きを照らせば回答漏れが分かる
説明したい内容だけを渡すと、相手の疑問が残ることがあります。提案書で答える質問を一覧にして下書きと照らし、回答の有無と確認先を記します。
- 質問を取り出す 商談中の質問をメモから取り出します。回答済みの質問も、相手が提案書での回答を求めているかを区別します。
- 未回答の質問を示す 答えがない質問には確認先を記します。作成担当者に回答そのものを推測させないようにします。
- 自社の説明を区別する 自社から示したい点は、相手の質問とは分けます。判断に必要な説明かどうかも見直します。
質問と説明事項の整理
| 整理する項目 | 書くこと | 注意 |
|---|---|---|
| 相手からの質問 | 質問の内容と、提案書で回答する範囲を書きます。 | 自社に都合のよい別の質問へ変えません。 |
| 未回答の質問 | 不明点、確認先、回答を得る時期を書きます。 | 答えがないまま断定しません。 |
| 回答済みの質問 | 伝えた回答と提案書への記載要否を書きます。 | 商談で伝えた内容との食い違いを防ぎます。 |
| 自社の説明事項 | 説明する理由と判断目的との関係を書きます。 | 相手からの質問として扱いません。 |
参照できる情報が提案書に使えるとは限らない
背景を理解するために渡す資料にも、提案書には載せない情報があります。参照してよい範囲と、記載してよい範囲を分けて指示します。
- 掲載の可否を示す 相手から受け取った資料でも、提案書で使えるとは限りません。共有された目的と使用範囲を確認します。
- 使わない情報を記す 他社の情報や社内の検討内容は、掲載しないものを明記します。資料を渡すだけでは判断を任せてしまいます。
- 判断待ちを分ける 使用可否が不明な情報は、確認が済むまで掲載を保留します。確認する人も決めておきます。
情報の使用範囲
| 情報 | 提案書で使うか | 扱い |
|---|---|---|
| 相手の提供資料 | 使用範囲を確認できた部分に限ります。 | 参照用と掲載可能な部分を分けます。 |
| 他社の情報 | 他社の情報は、提供元の使用許可と提案書に載せる範囲を確認して判断します。 | 過去の提案から無断で転用しません。 |
| 社内の検討内容 | 外部に示すと決めた内容に限ります。 | 検討中の案や内部事情を区別します。 |
| 使用可否が不明 | 確認が済むまでは使いません。 | 確認先と判断結果を記録します。 |
作成中の推測を防ぐには質問の担当と連絡方法が要る
依頼票を渡した後にも、不明点は出てきます。質問を誰が受け、どの方法で連絡し、いつ回答し、相手への確認を誰が担うかを先に決めます。
- 質問の担当を決める 質問を受けて回答を取りまとめる人と、質問と回答を残す場所を決めます。口頭で答えた内容も記録します。
- 回答時期を決める 下書きに必要な回答の期限を共有します。回答が間に合わない箇所は、進める範囲と保留する範囲を決めます。
- 相手への確認を分ける 社内で答えられる質問と、相手に尋ねる質問を分けます。相手への確認役も明らかにします。
質問への対応
| 場面 | すること | 記録 |
|---|---|---|
| 依頼時 | 質問先、連絡方法、回答期限を決めます。 | 依頼票に記します。 |
| 社内で回答可能 | 根拠を確認して回答します。 | 回答と根拠を残します。 |
| 相手に確認必要 | 確認役と尋ねる内容を決めます。 | 確認状況と相手の回答を残します。 |
| 回答が遅れる | 保留箇所と進められる範囲を伝えます。 | 変更後の回答予定を残します。 |
| 前提が変わる | 変更点と修正が必要な箇所を伝えます。 | 依頼票にも反映します。 |
下書きの確認には依頼時に共有した観点が必要だ
下書きができてから判断基準を追加すると、追加の要望なのか、当初の依頼への対応不足なのかを区別しにくくなります。確認する観点と役割を依頼時に伝えます。
- 判断に必要な回答を見る 商談相手が判断したいことへの回答があるかを確認します。説明量の多さだけで良し悪しを決めません。
- 事実の扱いを見る 前提との食い違いや、未確認事項の断定がないかを確認します。相手の言葉の意味が変わっていないかも見ます。
- 修正の役割を分ける 事実や方針の確認は依頼する側が担います。確認結果を受け取った作成担当者が下書きへ反映します。
下書きの確認観点
| 観点 | 確かめること | 直す人 |
|---|---|---|
| 相手の判断に必要な回答 | 目的に必要な回答があるかを見ます。 | 依頼する側が不足を示し、作成側が反映します。 |
| 前提との一致 | 状況、要望、条件と合うかを見ます。 | 依頼する側が前提を確認し、作成側が反映します。 |
| 未確認の扱い | 未確認を確定として書いていないかを見ます。 | 依頼する側が確認状況を伝え、作成側が直します。 |
| 発言との一致 | 言い換えで意味が変わっていないかを見ます。 | 依頼する側が意図を確認し、作成側が直します。 |
| 情報の使用範囲 | 使わない情報が含まれていないかを見ます。 | 依頼する側が使用可否を示し、作成側が直します。 |
依頼の変更前後を営業管理表に残せば経緯が分かる
依頼票には、作成に必要な情報と確認の進め方をまとめます。営業管理表の該当案件に依頼内容と、変更前後の内容・変更日・理由を残し、後から経緯を確認できるようにします。
- 不明点も書き残す 下の記入欄には例文を置いていません。実際の商談内容を書き、分からない項目は未確認と記します。
- 補足情報も添える 相手の言葉には自社の解釈を区別して添えます。使わない情報と、使ってよい範囲を別の欄に記します。
- 案件ごとに記録する 営業管理表に依頼票の保存先、作成・確認する人、回答状況を残します。変更時は理由も追記します。
作成依頼票の記入欄
| 項目 | 記入欄 | 項目 | 記入欄 |
|---|---|---|---|
| 相手が判断したいこと | 提案の前提 | ||
| 決まったこと | 未確認のこと | ||
| 相手の言葉 | 答える質問 | ||
| 使わない情報 | 使ってよい範囲 | ||
| 質問の担当と連絡方法 | 回答の期限 | ||
| 確認の観点 | 記録先 |
