電話や商談を任せる前に、仕事に合わせて練習する

新任の担当者が、同行で見たやり取りを自分でもできるかを確かめます。任せたい仕事から練習する場面を選び、発言や行動を見て任せる範囲を考えます。

  • 練習する場面を決める 実際に任せる仕事を出発点に、練習する場面と相手役の設定を決めます。
  • 確認する項目を決める できたかどうかを発言や行動で確かめられる項目と、参照できる資料を決めます。
  • 任せる範囲を決める 練習の記録と本人の振り返りから、任せる仕事と支援が必要な場面を決めます。

練習は、実際に任せる仕事に合わせて組む

電話の冒頭を任せる場合と、商談で話を聞く場合では、必要な練習が違います。まず、どこからどこまでを任せるか決めます。

  • 仕事の範囲を区切る 「電話を任せる」だけでなく、用件を伝えるところまでか、次の連絡を決めるところまでかを明らかにします。
  • 練習する内容を選ぶ 任せる範囲に含まれるやり取りを選びます。電話から商談までをまとめて練習する必要はありません。
  • 先輩に引き継ぐ場面を決める 先輩に確認してから答える場面と、対応を先輩に引き継ぐ場面も、任せる範囲と一緒に決めます。

仕事に合わせた練習(編集部作成の例)

任せる仕事練習する内容
電話の冒頭名乗って用件を伝え、取り次ぎが可能か確認します。
商談での聞き取り現在の進め方と困っていることを聞き、理解した内容を確認します。
商談後の連絡合意した内容を整理し、次の連絡内容と時期を確認します。
不明点の引き継ぎその場で答えられない質問を整理し、先輩から返答すると相手に伝えます。

練習する場面は、相手の状況と目的で指定する

「電話をかける」だけでは、何を練習するかが定まりません。相手がどんな状況にあり、その場で何を確認したいかまで指定します。

  • 仕事から場面を選ぶ 任せる仕事の中から、判断に迷いそうなやり取りを選びます。練習のためだけに難しい場面を足しません。
  • 相手の状況を決める 担当者が不在なのか、忙しくて話せないのかなど、対応を考える手がかりを設定します。
  • その場の目的を決める 次の連絡時期を確認するなど、その場で何ができればよいかを決めます。

場面の指定方法(編集部作成の例)

曖昧な指定具体的な場面の指定
電話をかける電話口の受付から担当者の不在を伝えられた場面で、改めて電話できる時期を確認します。
話を聞く商談で困りごとがないと言われた場面で、現在の業務の進め方を聞きます。
質問に答える商談で未確認の条件を聞かれた場面で、確認が必要と伝え、返答方法を相談します。

確認する項目は、発言や行動で書く

「落ち着いて話せる」では、見る人によって判断が変わります。その場で何を言い、何をしたかで確認できる項目に書き換えます。

  • 印象を行動に直す 「説明が上手」ではなく、「内容を説明した後に不明点がないか尋ねた」など、観察できる形にします。
  • 見聞きできる項目にする 理解や意欲を推測せず、聞き直した内容や記録した事項を確認します。
  • 場面ごとに項目を絞る その場面の目的に関わる項目を選びます。話し方の細部までまとめて判断しません。

確認項目の書き換え(編集部作成の例)

印象の項目発言や行動の項目
落ち着いている取り次ぎを頼む前に、名乗って用件を伝えたか。
聞き上手である相手の説明を要約し、理解に違いがないか確認したか。
柔軟に対応できる不明な条件を断定せず、確認して返答すると伝えたか。
段取りがよい話を終える前に、次の連絡内容と時期を確認したか。

相手役が迷わず返せる設定を用意する

相手役の返し方がその場で変わると、練習の結果を振り返りにくくなります。会社や役職に加え、質問されたときの返し方を用意します。

  • 状況と返し方を決める 会社・役職・状況を決め、聞かれたら答える情報と、答えられない情報を書きます。
  • 見せる設定を決める 実務でも事前に分かる情報は本人に渡します。質問して初めて分かる情報は相手役だけに渡し、本人には事前に見せません。
  • 設定を残して使う 同じ場面を再び練習できるよう、設定を保存します。変更した場合は内容を記録します。

相手役の設定(編集部作成の例)

設定の要素決めること(架空の例)
会社・役割製造業の会社で、購買部門の窓口を担当しています。
現在の状況会議に入るため、詳しい説明を聞く余裕がありません。
最初の返し方今は話せないと伝えます。自分から連絡時期は提案しません。
質問への返し方連絡可能な時期を聞かれたら、翌営業日の午後と答えます。
事前に見せる範囲会社の業種と相手の役割は本人に伝えます。忙しい理由と連絡可能な時期は伏せます。

練習中に見てよい資料と置き場所を決める

実務で参照できる資料は、練習でも使えるようにします。覚えておく内容と、資料で確認して答える内容を分けます。

  • 実務と同じ条件にする 電話や商談で見てよい資料を選び、練習前に使える状態にします。
  • 暗記する範囲を決める 名乗りや用件など、資料を見ずに伝える内容を決めます。料金や契約条件など資料を見て答えてよい内容は、参照する箇所を明示します。
  • 探せる場所に置く 資料の置き場所と参照する箇所を共有します。必要な情報を探せたかも確認します。

資料の扱い方(編集部作成の例)

資料練習での扱い
用件のメモ練習前に確認します。名乗りと用件は、見ずに伝える範囲とします。
サービス説明資料実務で使う版を手元に置き、説明中の参照を認めます。
料金・条件の資料条件を聞かれたときに参照します。記載がない内容は確認して返答します。
対応の手順書共有の置き場所から開き、不明点の確認先を探します。

相手役は、答えを先回りして教えない

詰まったときに答えを教えると、自分で判断できたかが分からなくなります。育成する側は練習前に相手役へ役割を説明し、相手役は設定に沿って応答します。

  • 役割を先に伝える 質問に答える役割と、練習後に助言する役割を分けます。途中で正解へ誘導しないことを共有します。
  • 設定どおりに返す 言葉に詰まっても、設定にある情報で応答します。聞かれていない情報を助け舟として足しません。
  • 助言は練習後に伝える 続行が難しければ、止まった場面を記録して区切ります。対応の助言は振り返りで伝えます。

相手役の応答(編集部作成の例)

場面相手役の対応
本人が言葉に詰まる次に聞く内容を教えず、発言を待ちます。
相手役が忙しいと伝える設定どおりに話せない旨を伝え、自分から次の連絡時期は提案しません。
本人が連絡時期を聞く設定に書かれた連絡可能な時期を答えます。
本人が設定外を聞く推測で情報を足さず、不明と伝えます。設定の追加が必要かは練習後に確認します。

観察者は、根拠になった発言や行動を記録する

「良かった」「不安がある」だけでは、何を続け、何を直すかが分かりません。確認項目ごとに、判断の根拠となる発言や行動を残します。

  • 発言と行動を残す 何を聞き、どう返したかを書きます。発言は短く引用するか、意味を変えずに要約します。
  • 確認項目に対応させる 記録を確認項目と並べます。そのやり取りが生じなかった項目は、未確認として残します。
  • 記録と判断を分ける 見聞きした事実と、そこから考えたことを別の欄に書きます。印象だけで結論を出さないようにします。

観察記録の書き方(編集部作成の例)

確認する項目発言・行動の記録判断・次の確認
用件を先に言う名乗った後、用件を伝えてから取り次ぎを頼みました。この場面では、用件を先に伝えられました。
不明点を確認する条件を聞かれ、資料を開きましたが、返答せずに止まりました。必要な箇所を探せなかったのか、振り返りで確認します。
次の連絡を決める相手から終了を告げられ、連絡時期を聞かずに終えました。聞かなかった理由を確認し、次の対応を考えます。
記録は架空の例です。場面が生じなかった項目と、対応できなかった項目を分けます。

本人が迷った場面から原因を確かめ、準備を補う

評価を伝える前に、どこで迷い、何を考えたかを聞きます。観察の記録と照らし合わせ、詰まった原因に応じて準備を補います。

  • 本人の振り返りを聞く 迷った場面と、そのとき選ぼうとした対応を聞きます。その後で、観察した発言や行動を示します。
  • 詰まった原因を分ける 知識が足りなかったのか、手順が分からなかったのか、相手役の設定が不足していたのかを確かめます。
  • 準備して同じ場面を試す 説明資料の確認や手順の整理、設定の追記を行います。同じ場面で、発言や行動がどう変わったかを見ます。

振り返りから再確認までの進め方

  1. 本人が振り返る
  2. 観察者が記録を示す
  3. 原因を分ける
  4. 準備を補う
  5. 同じ場面を確認する
原因は重なることもあります。練習で確認できたことから、補う準備を考えます。

練習結果は、任せる範囲の判断材料にする

練習でできたことを、それだけで営業の仕事を全部任せられるとは判断しません。確認できた場面と支援が必要な場面を分け、任せ方を決めます。

  • 確認できた仕事を任せる その場の目的に沿って対応できたと確認できた場面をもとに、任せる範囲を決めます。判断に迷ったときの相談先も伝えます。
  • 同行や分担で補う 対応できなかった場面や未確認の場面は、先輩が同席するか、その部分を引き受けます。
  • 任せた後も記録する 実務で迷った場面と対応を残します。記録を見て、支援の内容や次に練習する場面を見直します。

練習結果と任せ方(編集部作成の例)

練習の結果任せ方
用件を伝えられた電話の冒頭を任せ、詳しい質問が出た場合の引き継ぎ先を決めます。
聞き取りで詰まった商談に同席し、追加の質問が必要な場面を先輩が補います。
条件回答は未確認条件の回答は先輩が担い、質問内容の記録を任せます。
資料を見て答えた資料で答えられた内容の範囲で仕事を任せ、記載がない内容の確認先を伝えます。
この整理は任せ方を考えるための例であり、実務での対応を保証する評価方法ではありません。

次に行う練習をシートに書く

任せたい仕事から場面を選び、次に行う練習を書きます。練習前に使う欄を埋め、振り返りの後で任せる範囲の判断を書き加えます。

  • 仕事と場面を書く 任せる仕事の範囲と、相手の状況、その場の目的を書きます。確認項目は発言や行動で表します。
  • 練習の条件を書く 相手役の設定と本人に見せる範囲、参照できる資料と置き場所、観察者と記録の場所を書きます。
  • 振り返りと判断を残す 本人が迷った場面と原因、補う準備を記録します。任せる範囲と、同行や分担で補う部分を書きます。

次に行う練習の記入シート(編集部作成の例)

記入項目記入欄記入項目記入欄
任せる仕事範囲:練習する場面相手の状況・その場で確認すること:
確認する項目発言・行動:相手役の設定会社・役職・状況・返し方・見せる範囲:
参照できる資料資料名・置き場所:観察者と記録の場所観察者名・保存先:
振り返りの確認迷った場面・原因・補う準備:任せる範囲の判断任せる仕事・支援する場面・判断の根拠:
振り返りでは本人の話を先に聞き、判断の根拠になった発言や行動を記録から確認します。