丁寧な発言でも用件が伝わるとは限らない
丁寧に話そうとして言葉を足すと、誰が何をするのかが見えにくくなることがあります。敬語を整える前に、伝えたい用件を整理します。
- 動作を行う人を示す 相手が行うことと自分が行うことを分け、発言の中で動作を行う人を示します。
- 依頼と知らせを分ける 相手に求める動作と自分から知らせる内容を整理し、発言の目的を決めます。
- 見直しの基準を決める 言い換えの前後で用件が変わっていないかを調べ、見直し表に記入します。
敬語を選ぶ前には動作と人の整理が必要だ
話しかける相手が、その文の動作を行うとは限りません。文が表す動作を捉えてから、動作を行う人を確認します。
- 動作を取り出す 確認・送付・説明など、文が表す動作を取り出します。丁寧さを表す部分だけで用件を判断しません。
- 動作と人を結ぶ 取り出した動作ごとに、誰が行うのかを書き添えます。人が分からない場合は、役割分担から確認します。
- 聞き手と区別する 話を聞く人と動作を行う人を分けて考えます。聞き手への配慮だけで、文全体の言い方を決めません。
動作と人を整理する表
| 確かめること | 方法 | 注意 |
|---|---|---|
| 文が表す動作 | 何をする内容かを書き出します。 | 丁寧さより先に動作を捉えます。 |
| 動作を行う人 | 動作ごとに人や部署を書きます。 | 不明な役割を推測で埋めません。 |
| 話しかける相手 | 誰に伝える発言かを書きます。 | 動作を行う人と混同しません。 |
言葉の選び方は、誰の動作を述べるかで変わる
相手の動作を述べる文と、自分の動作を述べる文では、言葉の選び方が変わります。慣れた言い方を両方に当てていないか見直します。
- 相手の動作を分ける 相手が読む、選ぶ、確認するなどの動作を取り出します。相手への依頼と、相手の行動を説明する発言も分けます。
- 自分の動作を分ける 自分が送る、調べる、説明するなどの動作を取り出します。自社の部署が行うことも区別して記録します。
- 使い回しを見直す 同じ言い方を使っている箇所は、動作を行う人を確かめてから読み直します。響きが丁寧かどうかだけで選びません。
誰の動作かを分ける表
| 区分 | すること | 注意 |
|---|---|---|
| 相手の動作 | 相手が行う動作を取り出します。 | 依頼なのか説明なのかも見ます。 |
| 自分の動作 | 自分や自社が行う動作を取り出します。 | 聞き手が相手でも動作は自分側に属します。 |
| 混在する文 | 動作ごとに相手側と自分側を分けます。 | 文全体を同じ言い方にそろえません。 |
丁寧さを足しても、動作を行う人が伝わるとは限らない
確認や対応に触れていても、誰が行うのかが抜けていると役割が伝わりません。人や部署を示す必要がある箇所から整えます。
- 人が消えた箇所を探す 確認や対応という動作だけが残った箇所を探します。前後の話を読んでも誰が行うか分からなければ、担当を確かめてから補います。
- 人や部署を示す 自分が行うのか、別の部署が行うのかを示します。部署に任せる場合も、実際の役割分担に合わせます。
- 役割を示して整える 誰が何をするかを示した後で、丁寧な言い方に整えます。言葉を足す途中で人や部署を消さないようにします。
動作を行う人を補う表
| 場面 | すること | 注意 |
|---|---|---|
| 確認を伝える | 誰が確認するかを示します。 | 確認という動作だけで終えません。 |
| 部署が対応する | 対応する部署を示します。 | 決まっていない担当を断定しません。 |
| 役割が変わる | 動作を行う人が変わる箇所で補います。 | すべての文で人を繰り返す必要はありません。 |
丁寧な言葉が重なっても、削るべきとは限らない
丁寧さを表す言葉が重なっていても、その重なりだけで削る箇所は決まりません。何を伝える発言かに戻り、意味への影響を見ます。
- 発言の目的に戻る 説明、依頼、知らせなど、発言の目的を書き出します。何を伝えたいのかを基準に、重ねた言葉を読み直します。
- 重なった箇所を拾う 丁寧さを表す部分が続く箇所に印を付けます。動作や人を読み取りにくくしているかを調べます。
- 削る前後を比べる 言葉を減らす場合は、配慮や条件まで失われないか比べます。短くなることだけを理由に削りません。
用件から重なりを見直す表
| 手順 | すること | 注意 |
|---|---|---|
| 目的を捉える | 発言で伝えたい用件を書きます。 | 長さだけで判断しません。 |
| 重なりを拾う | 丁寧さを表す部分が続く箇所を見ます。 | 重なっているだけで削りません。 |
| 前後を比べる | 人・動作・条件が残るか調べます。 | 必要な配慮まで取り除きません。 |
許可を求めるかどうかは、相手の判断が要るかで分かれる
自分が行う動作でも、相手の許可が必要な場合と、知らせるだけの場合があります。配慮を示したい気持ちと、許可の必要性を分けます。
- 許可の必要性を見る 相手が認めることを前提に進める動作かを調べます。許可が必要なら、判断してほしい動作と範囲を示します。
- 配慮の内容を分ける 時間や負担への配慮を示したい場合は、その内容を整理します。相手の都合を確かめる必要があるなら、許可とは別に尋ねます。
- 知らせる内容を示す 実施が決まっていて許可を要しない場合は、動作と予定を知らせます。相手が判断する必要のない問いを増やしません。
許可の必要性で分ける表
| 場面 | すること | 注意 |
|---|---|---|
| 許可が必要 | 行う動作と範囲を示して、許可を求めます。 | 許可がある前提で話を進めません。 |
| 配慮を示したい | 気にかけている負担や事情を示します。 | 配慮と許可を同じものとして扱いません。 |
| 知らせるだけ | 行う動作と予定を伝えます。 | 判断を求める発言に変えません。 |
依頼には、求める動作を示す必要がある
丁寧に依頼していても、求める動作が省かれていると、何をすればよいかが伝わりません。依頼する動作と、その動作の対象を発言の中に残します。
- 求める動作を決める 読む、確認する、選ぶ、返答するなど、必要な動作を整理します。対象を渡すことだけで依頼を済ませません。
- 省かれた動作を探す 対象だけを示して、依頼の言葉で文を終えている箇所を探します。何をしてほしいかを聞き手の推測に任せません。
- 対象と範囲を残す 依頼する動作に、対象や必要な範囲を添えます。丁寧に整える際も、依頼を実行するための情報を省きません。
依頼の動作を点検する表
| 場面 | すること | 避けること |
|---|---|---|
| 対象を渡す | 対象に対して求める動作を示します。 | 対象の名前だけで依頼を終えます。 |
| 判断を求める | 何を選び、どう返答するかを示します。 | 確認と選択を曖昧にまとめます。 |
| 範囲を絞る | 確認する箇所や返答の範囲を示します。 | 依頼の範囲を推測に任せます。 |
自分の動作を依頼の形で話すと、役割が曖昧になる
自分が行うと決まったことを依頼の形で話すと、相手に求める役割が曖昧になります。知らせる内容と、判断を求める内容を分けます。
- 知らせかを見極める 自分が行うことを伝える発言なら、動作と予定を示します。自分の担当する動作を、相手への依頼に紛れ込ませません。
- 尋ねる対象を絞る 許可が必要な場合は、判断してほしい点を示します。実施する人まで曖昧になるような尋ね方を避けます。
- 別の依頼を分ける 自分の動作に加えて相手の作業も必要なら、別の依頼として示します。知らせの中に相手の作業を隠しません。
知らせと依頼の役割を分ける表
| 場面 | すること | 注意 |
|---|---|---|
| 自分が実施する | 自分の動作と予定を知らせます。 | 相手の作業のように聞こえる言い方にしません。 |
| 許可を求める | 自分の動作を示して実施の可否を尋ねます。 | 実施する人と判断する人を分けます。 |
| 相手の作業も必要 | 相手に求める動作を別に示します。 | 知らせるだけの発言の中に紛れ込ませません。 |
書面で使える表現が話し言葉に向くとは限らない
書面なら読み返して意味を取れる表現も、会話では意味を追いにくいことがあります。言葉の意味を説明し、声に出したときの伝わり方を確かめます。
- 書面の癖を見つける 書面の表現をそのまま話す箇所を探します。前置きが長く、動作や用件が後ろに隠れていないかを見ます。
- 意味を説明する 使っている言葉の意味を、自分の言葉で説明します。説明できない言葉は、意味を確認してから選び直します。
- 声に出して比べる 声に出して読み、用件がどこで分かるかを確かめます。丁寧さを保ちながら、耳で追える文に整えます。
話し言葉として見直す表
| 確かめること | 方法 | 注意 |
|---|---|---|
| 書面からの転用 | 書面と同じ表現を使う箇所を探します。 | 書面で使うことだけを理由に残しません。 |
| 言葉の意味 | 何を伝える言葉か説明します。 | 響きだけで丁寧さを判断しません。 |
| 声での伝わり方 | 声に出して用件が分かる位置を見ます。 | 話しやすさのために条件を落としません。 |
言い換えの前後は、元の用件と照らす必要がある
言い換えによって、行う人や依頼の範囲まで変わることがあります。元の用件を記録し、見直した後の発言と照らし合わせます。
- 人を記録する 動作ごとに、実施する人や部署を記録します。言い換えの後も同じ人の動作として読めるかを確認します。
- 依頼を記録する 相手に求める動作と対象を記録します。確認だけの依頼が、選択や返答まで求める内容に変わっていないかを見ます。
- 条件を記録する 期限、対象範囲、実施の前提を記録します。予定を確定事項に変えたり、必要な条件を省いたりしていないかを調べます。
言い換えの前後で比べる記録表
| 記録項目 | 書くこと | 理由 |
|---|---|---|
| 動作を行う人 | 動作ごとに人や部署を書きます。 | 役割の変化を見つけられます。 |
| 依頼の内容 | 求める動作と対象を書きます。 | 作業の追加や省略を見つけられます。 |
| 条件 | 期限・範囲・実施の前提を書きます。 | 用件が変わっていないかを比べられます。 |
見直し表には、表現と用件の両方を残す必要がある
商談で使う発言を取り上げ、伝えたい用件から順に記入します。見直した理由も残すと、似た発言を扱うときに判断の根拠を参照できます。
- 元の発言を残す 使っている発言と、その発言で伝えたい用件を記入します。表現を直す前に、人・動作・許可の必要性を整理します。
- 見直した点を書く 人を補った、依頼の動作を残したなど、変更した点と理由を記入します。修正後の発言も同じ行に書きます。
- 確認結果を保存する 用件が変わっていないかを確認し、結果と記録先を記入します。判断が付かない点も残し、確認後に更新します。
敬語の見直し表
| 商談で使う発言 | 伝えたい用件 | 動作を行う人 | 許可を求めるか・知らせるか・依頼か | 依頼する動作 | 修正後の発言 | 見直した点と理由 | 用件が変わっていないかの確認 | 記録先 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
