通訳を介した返事が提案への承諾とは限らない

通訳が入る商談では、誰の発言で、何についての返事かを確かめる必要があります。準備から当日の説明、商談後の記録まで、確認の進め方を整理します。

  • 商談前に何を決めるか 誰が通訳を担い、誰が提案に回答するかを確認し、商談の目的・資料・自社独自の呼び方を共有します。発言の区切りと確認の合図も決めます。
  • 商談中にどう確かめるか 主語と対象を示し、相手本人に一つずつ質問します。通訳者の補足を分け、意味が合わなければ説明を止めます。
  • 商談後に何を残すか 相手が説明を聞いたことと、提案を承諾したことを分けます。本人の回答に基づき、確認済みの内容と確認が残る箇所を記録します。

通訳を担う人が商談の判断も担うとは限らない

相手側の社員が通訳する場合でも、提案への回答を任されているとは限りません。外部の通訳者が入る場合も、誰に判断を求めるかを商談前に確認します。

  • 通訳する範囲を聞く 誰の発言を、どの場面で通訳するかを聞きます。相手側の社員か外部の人かだけで、役割を決めつけません。
  • 判断する人を聞く 提案の採否や条件について、誰が回答するかを確認します。その場で判断できる範囲も聞きます。
  • 兼任でも発言を分ける 通訳と判断を兼ねる場合は、相手の発言を伝えているのか、自身の判断を述べているのかを示してもらいます。

通訳と商談の判断を分けて確認する

参加者通訳の役割商談での役割
相手側の社員誰の発言を通訳するかを聞きます。自身でも判断する範囲があるかを聞きます。
外部の通訳者通訳を依頼された範囲を聞きます。提案に回答する人を別に確認します。
判断する本人通訳を介して発言するかを聞きます。その場で回答できる事項を聞きます。
表は編集部作成の例です。

通訳の準備には商談の目的と同じ版の資料が必要だ

当日に資料だけを渡すと、何を説明し、何への回答を求めるかが通訳者に伝わらないことがあります。商談の目的と確認したい事項を添えて、相手に示す資料と同じ版を先に渡します。

  • 説明の目的を伝える 紹介だけで終えるのか、条件への回答まで求めるのかを伝えます。当日説明する範囲も示します。
  • 質問の意図を伝える 相手に確かめたいことを先に渡します。相手本人に回答を求める事項だと伝え、通訳者の推測で答えてもらわないようにします。
  • 資料の版を確認する 相手に示す資料と同じ版を渡します。差し替えた場合は、変更した箇所も知らせます。

資料に目的と確認事項を添える

渡すもの渡す目的渡す前に確かめること
商談の目的当日の到達点を伝えます。説明する範囲と求める回答が明確か
確認したい事項質問の意図を伝えます。本人に回答を求める内容が分かるか
提示する資料説明箇所を先に把握してもらいます。相手に示す版と一致し、共有してよいか
表は編集部作成の例です。

自社の呼び名だけでは指す範囲が伝わるとは限らない

商品名や自社独自の呼び方には、名前だけでは分からない範囲や条件があります。通訳者と事前に意味を確認し、訳し方が未定の言葉は未確認の事項として記録します。

  • 名前と対象を結ぶ 商品名や機能名が資料のどこを指すかを示します。同じ名前で呼ぶ範囲に含まれる機能と含まれない機能も説明します。
  • 社内の意味を伝える 自社独自の呼び方について、指している作業や条件を伝えます。通訳者が想定した意味との違いを確認します。
  • 訳し方が未定の言葉を残す 訳し方が決まらなければ、その理由と確認先を記録します。当日に確認が必要な言葉として扱います。

通訳前に言葉の対象と範囲を確認する

言葉の種類通訳者に説明すること決まらないときの扱い
商品名・機能名資料上の位置と対象の範囲を示します。名前だけで説明を進めません。
自社独自の呼称指す作業と含まない作業を示します。意味を説明できる社内の人に聞きます。
訳し方が未定の語伝えたい意味と必要な条件を示します。未確認として残し、当日も確認します。
表は編集部作成の例です。

通訳を挟む説明には発言の区切りと合図が必要だ

説明を続けると、意味を確かめたい箇所があっても途中で止めにくくなります。一文ごとに止めることを基本に、確認の合図と発言を再開する目安を決めます。

  • 一文ごとに止める 説明を一文で区切り、通訳が終わるまで待ちます。長い条件説明は、話し始める前に文を分けます。
  • 確認の合図を決める 意味を確かめたいときは、手を上げるなどの合図を出してもらいます。合図があれば説明を止めます。
  • 通訳に発言を重ねない 通訳中に補足を思いついても、話し終わるまで待ちます。補足だと伝えてから、次の発言を始めます。

発言と確認の順序を決める

決めること営業担当者がすること通訳者に頼むこと
発言の区切り一文ごとに止まります。通訳が終わったことを示します。
確認の合図合図を見たら説明を止めます。不明な箇所で合図を出します。
説明の再開通訳と確認が終わってから話します。確認が残る場合は再開前に伝えます。
表は編集部作成の例です。

主語と対象を省くと作業や条件の取り違えが残る

こちらで対応します、とだけ言うと、誰が何をするのかが曖昧になります。相手本人に向けて説明し、作業をする会社と対象を名前で示します。

  • 作業する側を示す 自社が行う作業と相手に求める作業を分けます。作業が切り替わる箇所では、行う会社の名前を入れます。
  • 指示語を名前にする それ・こちらだけで対象を示しません。資料名や作業名を言い、指している対象を明確にします。
  • 条件まで一緒に伝える できることには、必要な条件を添えます。条件を言う前に、無条件でできると受け取られる形で説明を区切りません。

誰が何をするかを文に含める

省きやすいもの起こる取り違え言い方
作業する側相手の作業も自社が行うと受け取られることがあります。作業を行う会社の名前を主語にして言います。
対象の名前別の資料や作業を指すと受け取られることがあります。資料名と欄の名前を言います。
必要な条件条件なしで対応できると受け取られることがあります。必要な条件を先に述べてから、できることを言います。
表は編集部作成の例です。言い方の列は説明の方針で、会話例ではありません。

質問を一つずつ分ければ回答が指す内容が分かる

質問をまとめると、返事がどの問いへの答えか分からなくなることがあります。通訳者に相手の考えを推測してもらわず、相手本人に向けて一つずつ尋ねます。

  • 質問を一つに絞る 希望する内容と開始時期など、別の事項を同時に聞きません。回答を確認してから次の質問へ進みます。
  • 回答の対象を聞く 回答がどの質問に対するものか分からないときは、質問した事項を示して聞き直します。曖昧なまま次の話題へ進みません。
  • 相づちで判断しない うなずきや短い返事だけで承諾と記録しません。提案を受け入れるかは、本人に改めて質問します。

質問と回答を対応させる

場面すること確かめること
聞く事項が複数質問を分けて本人に尋ねます。今の質問への回答が得られたか
回答の対象が不明質問した事項を示して聞き直します。何についての回答か
相づちがあった提案への意向を別に尋ねます。承諾か、検討中か、別の意向か
表は編集部作成の例です。相づちの意味は国や言語で決めつけません。

通訳者の補足が相手本人の希望とは限らない

通訳に説明が加わったときは、相手の発言と通訳者の補足を分ける必要があります。希望や判断に関わる内容は、誰の発言かを確かめてから記録します。

  • 補足だと示してもらう 通訳者自身の説明を加えるときは、補足だと先に伝えてもらいます。相手の発言の続きとして記録しないようにします。
  • 発言の出所を聞く 誰の言葉か分からないときは、本人の発言か通訳者の説明かを尋ねます。内容だけで出所を推測しません。
  • 希望は本人に聞く 補足に相手の希望や判断が含まれていたら、本人に確認します。回答が得られるまでは希望として確定しません。

本人の発言と補足を分けて扱う

発言の種類見分け方扱い
本人の発言本人の発言を通訳した内容か聞きます。質問と対応させて記録します。
通訳者の補足補足だと明示してもらいます。本人の回答とは別に記録します。
出所が不明誰が述べた内容か聞きます。出所が分かるまで判断の根拠にしません。
表は編集部作成の例です。

意味が決まらない言葉には合意の前に確認が要る

同じ言葉を使っていても、想定する作業や条件が食い違うことがあります。違いに気づいたら該当する説明を止め、指している内容を確認してから再開します。

  • 該当箇所を示す 意味が合わない言葉と資料の箇所を特定します。どの説明に戻るのかを、相手と通訳者に示します。
  • 作業と条件を言い直す その言葉で指している作業と条件を説明します。相手が想定している内容も、本人への質問で確認します。
  • 合意に含めない 意味が決まらない内容は合意に含めません。食い違う点と確認先を残し、いつ確認するかを決めます。

意味の食い違いを確認してから進める

起きることすること記録
対象が食い違う説明を止め、言葉と資料の箇所を示します。該当する言葉と資料の見出しを残します。
条件が食い違う双方が想定する作業と条件を確認します。一致した点と異なる点を分けて残します。
意味が決まらないその内容を合意から外し、確認先を決めます。未確認の内容と確認する時期を残します。
表は編集部作成の例です。

説明を聞いたという返事が提案への承諾とは限らない

説明を聞いたことと、提案を受け入れることは別です。通訳を介して本人に回答を求め、承諾の範囲、引き受ける作業、未決定の事項を分けます。

  • 聞いたことを分ける 説明を聞いたという返事は、提案への承諾として記録しません。分からない箇所が残っていないかも尋ねます。
  • 承諾の範囲を聞く 受け入れる内容と条件を本人に尋ねます。相手に依頼する作業も、引き受けるかを別に確認します。
  • 未決定の内容を残す 社内確認や検討が必要な事項を聞きます。回答がない箇所を承諾済みとして記録せず、次の確認先と時期を残します。

本人の回答に基づいて確認状況を分ける

区分確かめ方記録に残すこと
説明を聞いた説明を聞けたか、不明点があるかを尋ねます。聞いた範囲と説明が必要な箇所を残します。
提案に承諾した受け入れる内容と条件を尋ねます。承諾した範囲と付いた条件を残します。
作業を引き受けた依頼した作業を引き受けるか尋ねます。引き受けた作業と実施する時期を残します。
まだ決まらない判断に必要な確認や検討を尋ねます。未決定の事項と確認先・時期を残します。
表は編集部作成の例です。

発言の出所と未確認の事項を残せば次の確認先が分かる

商談の記録には、準備した内容に加えて、本人の回答と通訳者の補足を分けて残します。確認が残る箇所には確認先を添え、次に誰へ何を聞くかを書きます。

  • 準備した内容を書く 通訳を担う人と提案に回答する人、資料の版、確認した言葉を記入します。発言の区切りと確認の合図も残します。
  • 回答と補足を分ける 質問と本人の回答を対応させ、確認できた内容を書きます。通訳者の補足は別の欄に記入します。
  • 次の確認を具体化する 意味が未確認の言葉や未決定の条件を書きます。確認先と確認する時期を記し、回答後に記録を更新します。

通訳を介する商談の確認表

確認項目記入欄確認項目記入欄
通訳を担う人氏名と通訳する範囲を書きます。判断する人氏名と回答できる範囲を書きます。
先に渡した資料資料名と版を書きます。確かめた言葉言葉と確認した意味を書きます。
区切りと合図止める位置と合図を書きます。相手の発言質問・回答・承諾の範囲と条件を書きます。
通訳者の補足補足した人と内容を書きます。確認が残る箇所未確認の意味や未決定の事項を書きます。
確認先残る事項ごとに、誰へいつ聞くかを書きます。
確認表は編集部作成の例です。記入欄の説明文を、実際の商談で確認した内容に置き換えます。